…き、気のせいか。
大体、大勢いる中で私だって分からないよね。
…うん。
―――――××××××――――――
「おい、…見ろよ。」
「うわぁ、び、美人!」
「うわぁー、キレー…」
「ね、ねぇ…でもさ。」
ーーなんか、怖くない?ーー
道行く人達が、るんちゃんを見ながらそう口裏揃えて言ってるのが聞こえる。
ヒソヒソ話も、ジロジロと見られるのが嫌いなるんちゃんがこんなにもされているのに気付かず、不機嫌でいるのは…
「おい、胡桃。」
「!!、はい」
「あいつは何なんだ?…双子か?」
?!
「さ、さぁ?で、でもさ違ってたよね。」
い、言えない。あれが双子で、生徒会長とキス魔のエロ野郎と一緒に暮らしてるなんて…言えない。
「違ってた、とは。胡桃はあいつを見分ける事が出来るのか?」
ーギクッー
見分ける?
いや、そうじゃない。疾馬くんとエロ野郎は似ているけど違う。
なんだろ、…瞳が違うのかな?
疾馬くんはキリッとしている黒目。
エロ野郎は疾馬くんと同じに見えるけど茶色の目だ。
…似ているけど、二人は全く一緒ってわけじゃない。
似ているけど、ちゃんと別人だ。
もう、いっその事るんちゃんに打ち明けて…。
「あ、あのねるんちゃん…。」
あ、あたし…じ、実は!!
「はーい、皆さん席ついて。」
え、
「とりあえず、また後でな?胡桃」
……ま、また逃してしまった!!
隠してるわけじゃないけど、なんかすんごく罪悪感が…。
るんちゃんにはいつも相談にのってもらったし(←主にバカ母の話)
早く、打ち明けてるんちゃんに状況を説明を…。
「って事で、今日からここのクラスの担任になった鷹野凌馬です。これからよろしくな」
キラキラと効果音がつきそうな笑顔が見える。
…あれ?
亮二お兄ちゃん…?
そう思った時、目が合う。
ーニコー
あっ!!!
ーガタン!ー
「りょ、亮二お兄ちゃん…」
「…胡桃?」
近くでるんちゃんが、あたしの反応に驚いている。
「えーと、久遠さん?
俺は、お兄ちゃんじゃないぞー」
そう言って、教室を笑わせる。
やだっ!
あたしっ…!!
「すっ、すいません!」
あー、やばい。
本当に、恥ずかしい。
でも、この人。
あの時の、優しい人だ!