ビクッ


あまりにも距離が近くて、体が勝手に反応してしまった。


「あ…ごめんね?怖がらせるつもりじゃなかったんだけど…」


申し訳なそうに、一輝君は一歩下がって謝った。


「…ううん、あたしの方こそごめんね?一輝君は怖くないって頭では分かってるのに、体が勝手に動いちゃうんだ…」


「…そっか。辛かったんだから、仕方ないよな」


「……うん。だけど、やっぱ今のままじゃダメだって思ってるのにな~。上手くいかないもんだよね…」


「…あ!ちょっと待っててくれる?」


「…え?」


「電話!かかってきちゃってさ。そこのベンチで待ってて!」


一輝君は携帯を指さして、次にベンチをさした。


「あ、うん。分かった。」


慌てたように携帯を握り締め、一輝君はあたしから離れていった。


言われた通り、ベンチに座って待つことにした。


「ちょっとそこのお姉ちゃん!彼氏とケンカでもしちゃったの?」


不意に声をかけられて、思わず横を向いてみると…


そこには、1人の男が立っていた。


やだっ!怖い…!


あたしは急いで、逃げようと立ち上がった。


だけど…もう反対側にも男がいて、すぐに捕まってしまった。


「やっ!離して!」


「離してって言われて、離すわけないだろ?俺達とどっかいい所行こうぜ~」


一瞬にして、中学の時の悪夢が蘇る。


怖い…!


でも…こんな状況の中、次に頭に浮かんだのは…


楓君の顔だった。


「やだっ!…助けて、楓君!」


「おい!そいつを離せよ!」


そう言って、現れたのは…












ホントに楓君だった…。