でも…今は、一秒でも早く帰りたい。


何だか兄弟喧嘩をしたあとのような気まずい雰囲気が、あたし達に流れていた。


すぐに片付けをして、彩花に耳打ちをした。


「彩花、早く帰ろ?」


あたしの気持ちなんて全く分かっていない彩花は、信じられない言葉を放った。


「あ、ごめん!あたし、これから一輝とデートすることになったから♪」


………は?


今、何ておっしゃいました?


なぁ~んて、現実逃避しそうになった。


「彩花は友達より、恋人を選ぶんだね…」


そんなあたしの言葉にも全く動じない彩花。


すぐに一輝君と出ていってしまった。


取り残されたあたし達。


少しの間、呆然と2人の後ろ姿を見送った。


……まだ明るいし、早く帰ろっと!


「あ…あたし、もう帰るね!バイバイッ」


緊張のあまり上擦ってしまった声で早口にそう言って、その場を去ろうとした。


すると…いきなり楓君があたしの腕を掴んだ。


えっ……!


突然のことにあたしは楓君を見た。


「お…送ってく!」


「えっ!でも…」


「いいから!」


「あ、うん…」









ナント、あたしは楓君と一緒に帰ることになってしまった。