額に感じる心地よさに目が覚める。保健室には珈琲の香ばしい匂いが漂っていた。

 いつものことだか保険医の姿は見当たらない。
 きっと外で煙草でもふかしているのだろう。


「おはよ」

「ん……光?」


 光は参考書らしきものを読んでいたのか、私が目を覚ますとその本を閉じる。


「熱ないじゃん」

「わざわざ起こさないでよ」


 額に感じた心地好さは光の手だったらしい。

 ずいぶんと冷たい手。

 その手が私の額から名残惜しそうに離れる。