「幸」 不意に聞こえてきた声。 立ち止まった場所は、人通りが少ない、校舎裏的なとこ。 幸って……富田幸先輩? あたしは気になって、物陰から見た。 見てしまった。 女の先輩が、富田先輩の腰に手を回し、キスをしているところを。 あたしは気付かれないようにその場から離れた。 早足で教室に向かう。 もう誰もいない教室は、やけに静かで、あたしの鳴咽混じりの声がよく響いた。