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木城蘭子は世の中に絶望をした。

次男坊が出かけたあとに、一本の電話が入ったのだった。



「…環ちゃん?おばさん、よく聞こえなかったからもう一回言って?」

どうしてだろう。
ただの女子高生にこんな恐怖を抱くなんて。

この娘の声はこんなにも冷たかったかしら。




『…引越しをするんです。母とはお友達と聞いていたので、連絡を』

「どうして?紀美ちゃんから何も、聞いてないわ?」



環ちゃんの母である紀美は私の友人だ。ママ友というやつで今まで彼女から相談を受けたり、他愛のない話をしていた。


それなのに、どうして――?
この娘の声はこんなに冷たいの?



『……父が失業したため、実家に帰ることになったんです』

「……そ、そう」

言葉が詰まった。あまりにも淡々と話すこの娘に。

『今までお世話になりました。葉澄君には内緒にしてください』

「どうして?……葉澄とは、お友達でいてくれたのでしょう?教えないわけには…」



そう…一緒に過ごして、遊んだでしょう?




葉澄が好きな女の子なんでしょう?











「              」


そうして、これが小堺環の最後の電話となった。