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「えっ――…」

葉澄の声が書道教室に響いた。


「し、師匠?俺、ちょっと聞き間違いをしたかもしれないから。もう一度言ってください…」

「じゃから。









――小堺環は、この教室を辞めた」





心臓がとんでもない速さで脈を打っていた。

微かに呼吸が荒くなったような気がした。

少しだけ瞳孔が開いたような気がした。

握り締めた拳が震えているような気がした。




(どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして……)



頭の中に「どうして」の言葉だけが繰り返されていく。



「いいい、一体どういうことですか!!!」

「煩い葉澄!!!今は稽古中だぞ!!」

「そんなこと関係ありません!!俺に納得のいく説明をしてください!!」


俺は滅多に怒らない。
そのため俺の怒声にチビたちはおびえている。

だが、そんなの関係ない。



(繋がりが消えてしまうっ――!)



俺には焦りしかなかった。



「お前に納得のいく説明をしてどうする!これは環の事情であり、お前には関係のないことだ!!」