真っ黒とした何かが心に絡みつき、心臓を抉るように締め付ける。


また、書道作品が落選した。
どうして、という気持ちが反芻するが……


一体何が悪かったのかだけでも私に教えて欲しい。


しかし、一瞬だけでも「どうでも良い」という気持ちも流れ込んでしまう。


出来ない自分に悔しくて涙が出てきそう。でも、流してしまって何が変わるだろうか。

何も変わらないとわかっていながらも、それでも意地を張る。



(……あぁ、私は何の為に習字をしているのだろうか)



先ほどかかってきた師匠の電話に、私はくじけそうになった。




『……もう、辞めても良いんだぞ』




諦めを含んだような言葉に誰も私を引きとめてくれないんだと察した。


その言葉に私への期待は無くなってしまったのだと、察した。


色々と解りすぎて頭が痛い。これ以上続けて何か意味があるのだろうか。



それさえも考えてしまった。
習字なんて辞めてしまえば、はー君のことなんて気にする必要なんてないのに。



「環ちゃん、どうかした?」

「ん?…あぁ、また今回も入賞止まりだなって思ってね…」

「私もだよー。どうやったら、木城葉澄みたいになれるかね~」




あぁ、私も思う。

なりたいになれない。

憧れているのに追いつけない。


手に届かない存在。


そんなものに焦がれてどうする私。


何も生まれないのに。



爽やかに吹いた風が私の髪を揺らし、落ちた青葉が空の彼方を舞うのだった。


(……あぁ、落ちていく)