「何が必要ないの?」

俺は半ば覚悟を決めながら聞いた。何の覚悟?




--環ちゃんと"確実な関係"に結ばれないことだ。




「合コンだよ合コン!だって、はー君ぐらいのレベルなら寄ってくるわよ~」

そうやって茶化す君の笑顔が例え嘘でも好きだから。

「そ、そんなことないよ!加賀美のギャップにやられる女の子の方が多いのに」

俺はどうやってもそれ以上踏み込めないのだ。

「加賀美君のギャップ?私にとったら、見たまんまの鬼畜さしかないと思うけど」

だから、もう君の心の中には入れないことなんて解っているんだ。







(……もう、上辺でしか話せない)


この気持ちを言うなんてできない。

それに、一生来るとも思えない。環ちゃんに男が出来るのは、想像を絶するものだが……


それでも、環ちゃんが笑っているのなら…

幸せにできるのなら…

もうそれ以上、俺は踏み込めないんだ。





人通りがスローモーションになる。この濃密だけど、殺伐とした空気でも俺は愛した。

それが、他人から異常と言われようとも。


俺は環ちゃんを愛している。






「ばいばい、はー君」





この言葉が本当の意味に成しえないように努力しか成す術がないのだから。