こんなんだから、私はいつまで立っても字も人間としても成長しないんだ。

英語のノートがゆうちゃんによってヒラヒラされるのを見て、虚しさしか湧いて来なかった。



これがはー君だったら、そんな妄想を何回も繰り返している時点で私は完璧に負け組の人間なような気がした。


友人である伊藤麻衣は神妙そうな面持ちで私を見つめるだけ。



(——平和にやって行くだけよ)



「矢沢さんって…嫌いだよ。あぁやって自分が偉いとしか思っていないし、"バカ"じゃんか。顔が可愛いだけで全部許されるって思っているよ」


麻衣が負け組だなんて言わない。だけれど、こうやって弱い立場の集団は派手な集団に向かってこんなことを言う。


「そう対して字も上手いわけじゃないのにね。さっきだって、大薙の人達と合コンするなんて言っていたけど、相手にされるわけないじゃんか」



《大薙》って——はー君が通っている学校だ。あの全国屈指の名門校がこんな中の下レベルであるこの高校を相手にするとは到底思えない。

ていうか想像するのも難しい。——どこから派生していったのか知らないが、大薙の生徒と知り合いだけでも相当なステータスになるらしい。



本当に馬鹿らしいことだ。私知り合いだけれど、良い事なんてあんまり無いわよ。

小学生の時に宿題をりーさんと一緒に教えてもらったことはあったけど。




(…はー君みたいな完璧人間がここの"欠陥品"みたいな女と付き合うのかな?)


私は考えてみて、首を振った。



有り得ない。



はー君は、こんな欠陥品みたいな女共なんかよりりーさんみたいな女を選ぶと思う。
綺麗だし面白いし、付き合っても誰も反対なんかしない。


世間的にも良いカップルになると思う。それか、ブランド品(大薙)の娘と付き合う方が彼の将来のためになるよ。