君死にたもうことなかれ

作戦行動中、しかも作戦は難航中。

こんな時に何故、その事に気づいたのかは分からない。

ともかく、ふと海上に視線が止まった。

…数キロ先に、白波が立っているのが見えた。

この距離から目視できるほどの大きさの、大きな白波。

海中に何かが潜んでいるのは明らかだった。

「潜水艦?」

傍らで舞姫が呟く。

が、特自(特獣自衛隊の略称)の潜水艦隊の増援という報告は聞いていない。

となると何だ?

潜水艦以外で、あれ程の大きさのもの…?

答えを導き出せないうちに、『それ』は目を見張る速さで接近し、海中から姿を現そうとしていた。

大きく隆起する海面。

まるで海底で爆発でも起こったかのように、水面が盛り上がり、水飛沫を上げて、潜んでいた何かが出現する。

「……っ!」

その姿に、俺も舞姫も、他の隊員達も、理性なき朱雀達でさえも目を奪われた。