教本を片手に、宿舎内の廊下を歩いていると。

「くどいぞ飛鳥伍長!」

聞き覚えのある声が聞こえてきた。

見れば、白夜大尉が激昂している。

その傍らには飛鳥伍長。

性懲りもなく、飛鳥伍長は白夜大尉を口説いているようだった。

いつぞやの夜に白夜大尉に平手打ちを食らわされた挙句、叱責されたにもかかわらず、まだ懲りていない。

「そんなに邪険にしないで下さいよ」

ヘラヘラと締まりのない顔で笑う飛鳥伍長。

「俺、こう見えても大尉に本気なんすから」

「……」

そんな会話のやり取り…といっても一方的に喋っているのは飛鳥伍長だが…の脇を通り過ぎ、俺は無関心を装って廊下を通過した。