「あら、刹那君どうしたの?」

食堂での食後、教本に目を通していた俺に、舞姫が声をかけてきた。

「珍しいじゃない。教本なんか持ち出して。復習?」

「…そんな所だ」

俺は本を閉じ、席を立つ。

その背中に。

「刹那君」

思う所があったのか、舞姫が声をかけてきた。

「九条さんの事、まだ気に病んでいるの?」

彼女は戸惑ったような表情で続ける。

「忘れろとは言わないわ。忘れられる筈もない事だもの…でも…いつまでも引き摺っていては、君の精神に負担がかかるわ。言ったでしょ、あれは誰の責任でもないの」

「わかっている」

背を向けたまま、食堂を出て行く俺。

俺は。

「…神獣は俺の手で駆逐する。一匹残らずだ」

あの日以来、神獣全てに対する並々ならぬ憎悪を燃やしていた。