君死にたもうことなかれ

呉基地、第504駆逐小隊宿舎。

「あんたって人はぁっ!!」

食堂のど真ん中で、俺はナスティ中尉の迷彩服の襟に掴みかかった。

「あんたが功を焦って独断専行なんてしなければ!!」

「……!」

中尉に掴みかかる俺を、ドルフ大尉が制止する。

ドルフ大尉は無口ながら、仲間の和というものを尊重する。

仲間内での揉め事の時は、いつも彼が制止役だ。

しかし。

「……っ」

ナスティ中尉は無抵抗だった。

俺に抵抗する素振りすら見せない。

彼女とてわかっているのだ。

彼女の軽はずみな行動が、九条の死を招いた。

彼女が御手洗少佐の命令を守っていれば、誰一人欠ける事なく、任務は達成されていたかもしれないのだ。