君死にたもうことなかれ

それでも。

「どけ刹那!」

食い荒らされて下半身が千切れてしまいそうな九条の体を、御手洗少佐が慎重に抱き上げた。

「近くまで、特獣自衛隊本部からの医療部隊が来ている。すぐに俺が連れて行く!」

「私もいきます!」

御手洗少佐と舞姫が、すぐに九条を搬送する。

その横で。

「…呉基地の衛生兵ならともかく、何故本部の医療部隊がこんな場所まで来ている…?」

訝しげな白夜大尉の声が聞こえた。

だが今の俺にはそんな事は最早どうでもよく、ただただ奇跡が起きて、九条が一命を取り留める事だけを切に願って。

それでも奇跡というものは、望めば容易に起きるほど都合の良いものでは決してなくて。