君死にたもうことなかれ

その様子に舞姫が気づく。

「刹那君、どうかした?」

「…舞姫、つかぬ事を訊くが」

俺は彼女の顔を見る。

「白夜・エメリッヒ・タチバナ大尉というのはどの人だ?」

本日の訓練で、早乙女大尉を倒した直後の俺を、赤子を捻るかのようにたやすく這い蹲らせた凄腕の兵士。

俺は機械甲冑越しにしか彼女と対峙していない為、素顔を知らなかったのだ。

「ふふっ、気になるかしら?」

意味ありげに微笑む舞姫。

「どいつだ?」

俺はジロリと舞姫を睨む。

『怖い怖い』

肩をすくめてそんなジェスチャーをした後、舞姫は小声で言った。

「あの隅の席で、一人食事をとっているポニーテールの女性…あの人が白夜大尉よ」