君死にたもうことなかれ

椅子の引っくり返る派手な音と共に、転倒する俺と九条。

「何だ貴様ら、そのだらけた挨拶と敬礼は。特獣自衛隊を嘗めているのか?」

上から睨めつけるように言う男性兵士。

「第504駆逐小隊所属の早乙女龍真(さおとめたつま)大尉だ。俺の名前と共に覚えておけ。特獣自衛隊は規律を重んじる。貴様らのようなチャラチャラした軟弱な小僧など、この隊内では決して認めは…」

その兵士、早乙女が長々とご高説をのたまっている間に。

「ぐふっ!?」

俺は立ち上がり、渾身の拳をくれてやった。

…言い分は分かる。

礼儀がなっていないというのは、この男の言う通りだろう。

しかし、それをわからせる為とはいえ、俺はともかく女の九条まで拳で顔を殴る。

その容赦のなさが許せなかった。