君死にたもうことなかれ

「流石『轟天』ですね、バッテリー交換だけでいいなんて。装甲にも軽い損傷しかない」

俺の補給を担当しているのは、まだ若い少女兵だった。

顔のそばかすが可愛らしい、如何にも年頃の娘。

「あの…お願いしてもいいですか?」

整備の途中、その少女は俺に言った。

「私の彼氏…機甲特殊作戦群に所属していたんですけど…さっき…戦死の報がありまして…」

「…!…」

少女の言葉に、俺は思わず目を見開く。

彼女は、恋人を失いながらも己の任務を全うしているのか。

それを思わせない手際のいい仕事ぶりで、泣き崩れる事もなく。

しかし、それも最早限界なのだろう。

「どの神獣が彼を殺したのかは分かりません…だけど…目に映る朱雀は全部殺して!殺して、殺して、殺し尽くして!私の彼氏の仇を討って!!」

そう言って。

少女は『轟天』の装甲にすがり付いて慟哭した。

…これもまた、直視に堪えない光景。

その悲痛な声が、胸を抉った。