君死にたもうことなかれ

やがて、作戦当日の朝が来た。

0400時。

まだ夜も明けないうちから、特獣自衛隊全部隊が出撃準備を整えていた。

…出撃前、現在のこの国の内閣総理大臣である畿内正成氏から、激励の言葉があった。

「この一戦に、我が日本の命運がかかっている。たとえ死しても、諸君兵士達の家族の安全は、この畿内正成が責任を持って守る。どうか憂う事なく、存分に戦って欲しい。武運を祈る。そして願わくば、勝利をこの日いづる国に!」

馬鹿な事を!

俺はもう少しで総理大臣に罵声を浴びせる所だった。

憂う事なく存分に戦えだと?

家族は守るから、だと?

それは国の為に、命を捨てろという事か!

生き残る敗北を選ぶなら、死んで神獣を一匹でも多く道連れにしろという事か!

ぬくぬくとシェルターの奥に閉じこもって、震えて何もする事のない者の言う事か!

いつだってそうだ。

国の上層が勝手に決めた戦争で、若い命が失われる。

生き残るのはいつも、その戦争を始めた連中ばかりだ。