君死にたもうことなかれ

「クールなのね、刹那君」

苦笑いする舞姫。

「感情表現が下手なだけだ」

俺は保守点検を終え、格納庫を出て行く。

その背中に。

「こんな事言ったら、九条さんがヤキモチ妬くかもしれないけど」

舞姫は再び俺に声をかけた。

「私は、刹那君と共にこの戦争を生き延びたい…平和な世界で、共に生きていきたい」

「……」

肩越しに振り向く。

頬を赤らめる舞姫。

その後ろに立つ『轟天』の無機質な顔が、どこか微笑んでいるように思えた。

『舞姫伍長になら、刹那君譲ってもいいです』

そんな九条の声が、聞こえたような気がした。

「…そんな事は、暁作戦が終わってから考える」

俺は素っ気無く背を向け、格納庫を出て行った。