君死にたもうことなかれ

どのくらい経ったのだろう。

本当に少佐の命が危ういのではないかという頃。

「もういいだろう、刹那」

白夜大尉が俺の拳を掴んだ。

「…はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ…」

最早振り解く力も残っていない俺は、そのまま鉄槌を制止させられた。

「…少佐が九条の事を知っていた事…知っていながら黙認した事…万死に値する罪だ。だが刹那…御手洗少佐も犠牲者に過ぎない。わかるか?」

「……」

俺は歯噛みしたまま押し黙る。

わかっている。

戦争が人を狂わせる。

殺し、殺され、命のやり取りが日常的になると、理性が麻痺してしまうのだ。

鬼畜外道の所業すら、いともたやすくやってのける。

その結果、九条が狂気の兵器の生贄となった。

「…刹那…」

血塗れの顔のまま、少佐が掠れた声を出した。

「お前には…轟天を纏ってもらわなければならん…来たるべき…『暁作戦』の為に…」