君死にたもうことなかれ

それは、確かに人間の狂気の産物だった。

透明のシリンダーの中に、特殊な薬液が満たされている。

その薬液に浸けられていたのは…脳と脊髄。

…御手洗少佐が言う。

「はじめから計画にはあった。機械甲冑の更なる性能向上の為、コンピュータよりも高い性能の操作補助システムを組み込む…それに不可欠なのは、同じ人間のサポート…しかし機械甲冑を二人乗りにするには、サイズが小さすぎる。そこで考えられたのが、死亡寸前の人間の脳と脊髄を摘出し、人工頭脳として機械甲冑の中に組み込む方法だった…それも、機械甲冑装着者と、より相性のいい人間が適しているとされた…」

「…っ…っっ…!」

震える。

ワナワナと震える。

訳の分からない汗が頬を伝い落ち、こみ上げてくる吐き気と涙を押さえ込むのに必死だった。

ガチガチと、噛み合わない歯が音を立てる。

そのシリンダーの下部に、金属製のプレートがはめられていた。

プレートには、こう刻まれている。

『sample number0001   KURUMI KUJYO』