君死にたもうことなかれ

全速力で廊下を走る。

この先の角を曲がった所が格納庫だ。

速度を緩める事なく、曲がり角を曲がろうとした時だった。

「!!」

突然の発砲!

咄嗟に壁際に身を隠す。

「近づくんじゃねえ!」

興奮気味の早乙女大尉の声が聞こえる。

発砲したのも大尉のようだった。

「早乙女大尉!」

壁に隠れたまま、俺は叫ぶ。

「『轟天』が欲しいのならば譲る。馬鹿な真似は止して投降しろ」

「刹那か!」

来たのが俺だと知り、早乙女大尉はますます興奮したようだった。

「哀れみのつもりか!貴様などに轟天を譲られたとあっては、俺のプライドに傷がつくんだよ!」

怒鳴り声と共にまた一発発砲!

弾丸が壁に当たり、掠めるような音を立てた。

「それに」

彼は続ける。

「俺には『轟天』は使えない…さっき試した所だが、予想通りだ…俺は九条に嫌われていたからな」