君死にたもうことなかれ

床には血溜まり。

体を起こすと。

「う…!」

ドルフ大尉の呻く声。

胸部に一発、腹部に二発。

彼の体には弾痕があった。

撃たれている。

しかもこの出血量…致命傷だ。

「舞姫、処置を…いや、衛生兵を呼んでくれ!早く!」

「わ、わかったわ!」

俺を一人にする事に一抹の不安を覚えたらしいが、ドルフ大尉の身の方が先だ。

舞姫は今来た道を戻っていく。

「しっかりしろドルフ大尉!」

息絶え絶えの大尉を抱きかかえ、警報の中、声を張り上げる。

「…っ…!」

最期の力を振り絞るように、俺の軍服の胸を掴む大尉。

口元から血を溢れさせ、それでも必死に、伝えるべき…伝えなければならない言葉を紡ぐ。

思えばこれが、ドルフ大尉の声を聞いた最初で最期だった。

「刹那…早乙女だ…早乙女大尉が…『轟天』を強奪に…!」