君死にたもうことなかれ

玄武の吐く火球の温度は、後に10万度と判明する。

これは機械甲冑の耐熱温度の数倍に達する。

食らえば、もって数秒。

甲冑を放棄しての脱出すら間に合わないほどの威力だ。

つまり食らえば死亡確定という事になる。

「くそっ…!」

白夜大尉の毒づく声だけが、辛うじて聞こえた。

死ぬ。

白夜大尉ほどの有能な兵士が、こんなにも呆気なく。

真紅に染まる視界を、俺はただただ見つめるしかない。

…なのに。

「!?」

飛鳥伍長のみが、誰も微動だに出来なかった真紅に染まる世界の中、逸早く行動を起こしていた。