君死にたもうことなかれ

十匹以上いた朱雀も、玄武の前では烏合の衆に過ぎなかった。

その死骸は海中に沈み、沿岸で燃え盛り、地面に叩きつけられて潰れた果実のような血肉を晒し、凄惨な光景を作り上げる。

…何にせよ、朱雀群は全滅した。

たった一匹の巨大な神獣、玄武の手によって。

「……」

隊の面々は、その光景を呆然と見ているしかなかった。

結果からするならば、玄武は我々特獣自衛隊の味方という事になる。

「少佐…これはどう捉えればいい…?」

上空で玄武の動向を窺っている白夜大尉が、地上の御手洗少佐に通信を送る。

「……」

当の少佐も、返答しかねている。

当然だろう。

敵の敵が味方とは限らない。

玄武はたまたま利害の一致から、朱雀の群れを葬り去ったに過ぎないのかもしれない。