君死にたもうことなかれ

悲鳴など上げる暇もない。

玄武の火球の直撃を受けた朱雀は、たった一撃で紅蓮の炎に包まれ、海中へと没する。

機械甲冑でさえ耐えられないであろう炎なのだ。

生身の朱雀が直撃に耐えうる筈もない。

たとえ生命力の高い神獣だとしてもだ。

…仲間を火葬で屠られ、周囲にいた朱雀達が威嚇の声を上げる。

声と同時に吐き出したのは、超音波メス。

鉄骨さえも豆腐のように両断する不可視の刃物。

朱雀群は玄武へと接近しつつ、超音波メスで仕留めようとする。

しかしこれすらも、玄武には効果をなさなかった。

直撃しても、玄武の堅牢な甲羅には火花を散らす程度。

傷らしい傷を付ける事も出来ないまま。

「!!」

一匹の朱雀が玄武の平手に叩き落とされ、地面に轢死体のような屍をさらした。