「アザム! 私の首に」
「えっ?あっ?!」

 突然自分に言われたアザムだったが、言われたとおりにベリルの首にしがみついた。

 そして、ライフルを持つ男達は皆、躊躇する。
 “抗体を打っていない”というベリルの言葉に戸惑いを隠せない。

 ウイルスの実態も把握していため、子どもに当たる危険性が自分達の危険性ともイコールで繋がってしまったためだ。

 それを読み切っていたベリルは、そんな男達に何の迷いも無く引き金を引いた。


「まあ、二人残れば……」

 そう言いながらまず、アザムを首から降ろしハンカチを渡してやる。

 

 その後倒れこんでいる男の一人に近寄り、まるで尋ねるような口調で話す。

「くくっ、収穫って所じゃないかね?」

 近づいた男とは髭を蓄えたリーダー格の男。

 
 子どもを抱えての攻撃は確実に自分の照準も甘くはなる。その為ベリルは初めからこの男を狙った。
 リーダーが撃たれた事で、後の三人はすぐに車に乗り込み逃げるように退散した。

「本当の狙いは、これって理由か?」
「お前達にまで追われていてはゆっくり出来ないのでな」
「俺が捕まったところで同士たちが――」
「まあ、尋問するのは、あの恐いFBIの人たちに任せるさ」

 ベリルはそういって親指を道路の方に向ける。