「誰に……――」

 ベリルはこの状況に対して既に疑問を持っていたが、少年には分からない。

「アザムを私に預けた男への報酬?」
「はははっ……ボクは死んじゃうんだから何も要らないよね」
 
 今にも泣きそうな声で力なく笑い、瞳に涙をためている。

「さっきの話聞いていただろ?アザム、お前は“基本的には”死なん。体力もある」
「え?」
「ウイルスと抗体を打たれている。運ぶためと扱いやすく為、子どもを使った」
 
 アザムの頭の中は死なない可能性が高い事は理解が出来たが“物”だった事に、今更ながら大きなショックを受けている。

 ベッドに座りながら、ぼんやりとその宝石達を眺めているアザム。

 ベリルはそれより、こうして宝石達を広げたときに、さっきから感じる違和感を読み取ろうとしている。

「――このオニキスか?」 
 
 言われ気になり、テーブルに近づくアザム。
 
 他の宝石より安いものが一番大きく、それだけが丁寧にドーム型の飾られたカットになっている。
 ベリルはその楕円形の黒い石を手にし眺めた。よく見ると入れ物になっている。

 石を少し斜めにひねってみると二つに分かれた。その中に数枚の紙が入っている。取り出してテーブルに置く。
 
「ほう……」
「何? この紙、全然読めないよ」
「言葉はドイツ語だ。かなり簡略化されている――」

 ベリルがその紙を眺めて思案にふけっていたら、一緒に意味も解らず紙を眺めていたアザム。
 
 しかし、いつの間にかアザムはそのまま眠ってしまっていた。ベリルはアザムを抱きかかえベッドに寝かしてやる。