駐車場には元のベリルのピックアップトラックが停まっている。二人はそれに乗り込んだ。

「おじさん、ボクは決めたよ。ちゃんと向き合うってね」
「そうか、では向うとしようか」

 車を運転させながら、携帯で番号を探すとカーナビに差し込む。

「ケイン、レイって男性は来たか?」
〔ああ、案内しておいたが……先に俺へ連絡の一つくらい出来なかったのかな?〕

 ケインの言い方は嫌味が少々こもっている。
 レイにはFBIを通じて手紙で伝わっていたが、ケインには伝えていなかったのだ。

 ケインは腕は誰よりも確かなのだが、現在は医師免許の無い医者……
 金持ちから訳ありの人間に傭兵、患者は様々。

「私達も昼過ぎ以降にはそっちに行くんだが?」
〔……勝手に裏口から入ってくれ。二階の三つ目の部屋だ〕
「OK、わかったよ」

 アザムとベリルは結構な距離を走っている。

 途中に通る大きな街や集落的な町、隠れながら走った道等を、アザムは少し懐かしい気持ちで眺めていた。


 そして二人が出合った町を通り、そこから少し離れた場所に数件が距離を置いて家並んでいる。
 
 ベリルはそこの一番端の家にある敷地に車を停める。

「ここだよ、きっと二人とも待っているだろう」
「あの……普通の家だよね?」
「まあな」

 アザムはケインの正体というか、現状を理解した。そして何となく携帯で嫌味を言った理由も分った。