リディアを乗せたジープがカラスの家を出てから、半日が過ぎようとしていた。

昼間、容赦なく照り付けていた太陽はその輝きを弱め、空一面に広がる真綿のような雲を橙色の濃淡で染め上げていく。

赤い大地のあちこちに聳える赤褐色の岩は、長い大きな影を落とす。

時折吹く強い南風は、大地の乾いた土を巻き上げ、深緑の木々の枝を畝るように揺らしている。


「リディアさん、大丈夫? お尻、痛くない?」

カラスはバックミラー越しにリディアの様子を伺う。


「俺は痛てェんだけど・・・」


「ユウリに聞いてないよ。」


「全然平気よ!

大地の色がとても素敵で、風がすごく気持ちよくて、お尻の痛さなんか何ともないわ!」


「やっぱり痛いんだ・・・。」


「だから、痛てェんだって!」