ライトは、夜中の11時を過ぎた頃に現れた。

バル・ヴィバックはその時刻になってもまだ、海の男たちの笑い声や、陽気な歌声で溢れていた。

ユウリは、ライトを見つけるなりその腕を取り、耳元で囁いた。


「悪いな。話は下で聞く。

ジャコスも同席するが・・・いいか?」


「ええ。

構いませんよ。 

むしろその方が話しが早いでしょう。 

彼は、シュラムの事を君より多少は知っているようですしね・・・。」


「あのさ・・・、ライト。

俺、お前と知り合ってからもう5年も経つけどさ、そのカチンとくる話し方、ぜんっぜん変わんないのな。」


ライトは、下を向きながら、あははと小さく笑って答える。

「習慣ですね。

薬師は、常に物事に冷静でいなくてはならない。 

自分の感情を抑えなくては、色々な事が見えてこないのです。」


「あぁ、ま、確かにお前がカラスみたいだったら、患者は不安になるけどよ。」

ユウリはそう言いながら、カウンターの中のブロスに軽く目配せし、地下へ降りる階段の扉を開けた。