「香澄ちゃんも部活だったの?」
「ううん。今、テスト準備期間だから部活はお休みなの。図書室でテスト勉強してたから、こんな時間になっちゃって」
翔の彼女であるクラスの委員長と話している香澄から少しだけ視線を逸らす。
未遂だったとは言え、あんな事しそうになったし。
「そうなんだ?うちの高校は明日からテスト準備期間だから、香澄ちゃんの所は少し早いんだね」
「うん。やっぱり同じじゃないんだね。あ、そうだ。花音ちゃんって数学得意だったりしないかなぁ?」
「…数学?うーん…あたしより一臣君の方が得意だと思うよ?」
「え、本当?あの、一臣君!」
委員長と話していた香澄がパッと俺の方に向いたから、少しだけびっくりしてしまう。
「あの、迷惑かからないぐらいのちょっとだけでいいから、数学教えてくれないかなぁ?」
窺うように恐る恐る聞かれて、
「いいよ」
俺はすぐに了承。
なぜならキスしそうになった詫びがこれで出来ると思ったから。
「本当?ありがとう!」
嬉しそうに笑った香澄に少しだけホッとした。

