「ほら、外だからもう恐くないよな?」


真っ暗で冷気を纏うような不気味な演出をされている中とは違い、外は自然の明るさそのまま。

放心状態の香澄を連れて、もう一度どこかで休もうとベンチを探す。

見つけたベンチに座らせて、何か顔を冷やすものをと考えてジュースしか思いつかず、近くの店に行こうと香澄から離れようとしたら、

キュッ


「………っ」


放心状態だった香澄が涙目で俺の服を掴んだ。

縋るようなその瞳に心の奥の何かが小さく揺れる。

それの意味に気付かずに俺は香澄の頭に手を伸ばす。


「ジュース買ってくるから、飲めないのある?」


ふるふると首を振る香澄に


「すぐ戻るから」


そう伝えると、俺の服を掴んでいた手がスッと離れて行く。

その手に少しだけ名残惜しさを感じながら、俺は近くの店へと歩き出した。