他校の君。【完】



ー…
………


一臣君に送ってもらって着いた家。


「今日はありがとう」


お礼を言ったら、また一臣君は『ん』と小さく頷いてくれた。


「じゃあな」

「うん」


こくん、と頷いてからバイバイて手を振って、帰って行く一臣君の背中を見続けた。


そして完全に見えなくなってから、家に入ったあたしは、小さくただいまと言ってから手を洗ってうがいをしてから自分の部屋に戻った。








「……はあ」


自分の部屋に戻ったあたしは、一臣君が取ってくれたうさぎのぬいぐるみを抱きしめながら、今日の事を考えた。

どうして泣いちゃったのか。

それはきっと、一臣君だから。

時間を置いてから考えると、それ以外の理由にもやっと気付いた。

相手が、雪だったから。

幼馴染みとして、

友達として、

恋愛対象じゃなくて、

けど、好きで。

一臣君へのあたしの好きと、雪への好きは同じ言葉だけど意味が全然違う。

だから雪には応えられなかった。


「好きって、難しいなぁ」



ぽつりと呟いたあたしはしみじみとそう思った。