Side 香澄


一臣君の優しさに甘えて暫く泣き続けた。

時間が経って、やっと落ち着いて来たあたしは、涙でぐちゃぐちゃになっちゃったであろう顔を隠しながら


「ありがとう」


一臣君にお礼を言った。

すると、一臣君は『ん』と頷いただけで、どうして泣いたのかを聞いては来ない。

ー…本当に優しいな。

しみじみとそう思っていると、一臣君の手が伸びて来て、そっと顎を持ち上げられた。


「か、一臣君!」


今、あたしの顔、凄くぐちゃぐちゃで…。


「目腫れてるな。暗くても近くの灯りで見える」

「………!!」


わー!!やっぱり見えちゃってるんだ!

途端に顔を赤くしてしまいながら、


「あの、離し」


俯こうとすると、


「けど、俺には隠さなくてもいいんじゃねーの?」


なんて言われた。


「泣けって言ったの俺だし」

「でもあたし、言われる前に泣いちゃったよ?」

「さらに泣かせたとか」

「…。ここの会話だけだと一臣君のせいで泣いちゃったみたいな感じになっちゃうね」

「だな。理由はあれだ。『一臣君が好き過ぎて、泣いちゃった』」

「や、確かにそれもあるけど…」


雪が、と心の中で続けると、何故か一臣君がピタリと止まった。


「???」


どうしたのかなぁ?