他校の君。【完】




『急に電話してごめんなさい』

「いや、電話ぐらい」


別にいつでもしていい、と言おうと思ったけど、それよりも香澄の様子が違う。

直接会ってる訳じゃない。

けど、それがよく分かる。

『ごめん』って言ったのは、もしかしたらそれを隠す為の強がりなのかもしれない。

そう考えていたら


『ご、ごめんなさい。や、やっぱり切るね?分からない事して本当にごめんなさい』


また香澄に謝られて、強がりなんだと確信する。

何かあって俺に電話したけど、香澄の事だから『やっぱり迷惑をかけたくない』とか考えたんだろう。

言葉通り、通話を切ろうとする気配がした俺は、


「香澄」


彼女の名前を呼ぶ。

すると、香澄が小さな声で返事を返した。


「今、どこにいんの?」


学校にいるんだろうと分かってはいても一応確認する。

すると、『学校』とまた小さな返事が返って来た。


「分かった。すぐに迎えに行くから校門で待ってて」


そう告げた俺は、通話が切れた携帯をロッカーに置き、急いで制服に着替え始めた。