「雪の気持ちに応えられなくてごめんなさい」
ペコリと頭を下げると、
「ん」
雪は短く返事をしてからくるりときびすを返した。
そして歩き出した雪は、両手を制服のズボンに突っ込みながら、
「…後夜祭出てくる」
そう言って教室から出て行った。
ー…
………
一人になった教室。
外から聞こえてくる後夜祭の明るい音楽を聞き流しながら、あたしは俯く。
雪が好きって言ってくれた。
けど、応えられなかった。
『好き』を言葉にする事がどれだけ勇気がいる事なのか、あたしは知っている。
好きな人が別の人を好きだと言う事を知った時の気持ちも知っている。
それを雪は…。
「………っ」
ポケットに入っていた携帯に手を伸ばしたあたしは、それを取り出して、ポチポチとボタンを押し始める。
何で?と聞かれたら上手く言葉に出来ないけれど、
何故か無性に、
一臣君の声が聞きたくなてしまった。

