玄関をちゃんと開いたあたしは一臣君の所まで小走りする。

そして着いた一臣君のすぐ側。

そんなあたしをジッと見下ろした一臣君が何故か手を伸ばして来た。


「???」


どうしたのかと不思議に思うあたしの前髪に一臣君の指が触れて優しく気遣うように押し上げる。


「…さっきの音と悲鳴はこれ?」

「………っ」


前髪で隠そうとしていたのに一臣君に音も声も聞こえていたらしい。

それが恥ずかしくなって、一歩後退ろうとすると、一臣君の腕が後頭部に回ってあたしを引き寄せたから、後退ろうとした足が一歩前に出てしまった。


「赤くなってるな」


痛いか?と至近距離で聞いてくる一臣君に意識しまくりながらコクコクと頷くと、


「そっか」


一臣君の頷く気配がして、そして


…チュッ


とおでこに微かに触れた唇。

え、と驚いている間に一臣君があたしの後頭部から腕を離して、あたしの手を握った。


その瞬間おでこのずきずきを一瞬忘れてしまう。


「じゃあ行くか」


完全に固まったあたしを何事もなかったかのように優しく引っ張って歩き出した一臣君にあたしの胸中は


(ぇぇえええ!?)


大変な事になってしまった。