Side 香澄
『俺、今なんか変な事言ってた?』
電話をいつ切ればいいのか分からないでいると、聞こえた声は『情けねーな』だけで。
「ううん?」
変な事なんて言ってないよ、と返事をすると電話先からほっとしたような気配が伝わって来た。
『そっか、よかった』
「う?うん」
何がよかったのかはよく分からないけれど、取り敢えず頷くと
『じゃあ、明日な。おやすみ』
一臣君からのおやすみの言葉。
「……はいっ」
おやすみって言われるのにさえ照れちゃいながら『はい』なんて返事をしちゃうと、電話先から今度は小さく笑う声が聞こえる。
だから
「おやすみなさい」
照れながらもう一度言い直したら
『うん。おやすみ』
今度こそ電話は切れた。
電話が切れた携帯を両手でギュッと握りしめながら、あたしは大きく息を吐く。
「き、緊張した…」
電話が切れた後もドキドキする心臓。
この音、聞こえなかったかな…。
うーん、と考えていると、また携帯が鳴ってあたしはびくりと跳ね上がる。
ばっ、と見下ろした携帯には『みっちゃん』の文字。
ー…あ、一臣君と電話出来た事でみっちゃんの事忘れてた。
電話の通話ボタンを押して、
「ごめんね、みっちゃん!」
まだ残るドキドキを胸にあたしはみっちゃんと電話をし始めた。

