Side 一臣
香澄の家から自分の家への帰り道。
さっきまで隣にいた香澄の事を思い出しながら歩いていると、前の方から誰かが歩いて来た。
特に気にも止めずに歩いていると、俺に気付いた前の方から歩いて来た奴が立ち止まり、表情を思い切り歪めた。
「なんで杉沢がここらへん歩いてんの」
かなり嫌そうな声を出したのは香澄の幼なじみの海谷。
コンビニか何かからの帰りらしく、透明の買い物袋を持っている。
「なんでって香澄を送って来たから」
そう答えた俺に海谷はますます嫌そうな表情を浮かべる。
「早速彼氏気取りかよ」
「気取ってねーよ。正真正銘の彼氏だから」
「あー…、そう言えばそうだった…」
嫌そうな表情のまま視線を伏せた海谷に少し驚いてしまう。
「香澄が言ったのか?」
「言われてない」
「じゃあ、何で」
知ってんの。
「見たら分かる。香澄が上の空…って俺が何で知ってんのかなんてどうでもいいだろ」
「まあ、そうだけど。もし香澄が言ったんだったら嬉しいだろ?」
「厭味か」
「あ、厭味になんのか。悪い、のろけたつもりだったんだけど」
「それが厭味だろが!」
全く厭味のつもりは無かったんだけど、ジロリと睨まれた為、悪い事をしたなと少し反省する。
「悪い」
「別に香澄との事謝られても、俺は認めてないから」
「いや、それは謝んねーよ。俺が謝ってんのは厭味に聞こえた方」
「………」
香澄と付き合った事を海谷に謝るつもりは無い。
それが悪い事だとは思ってねーし、俺だって香澄が好きなんだから。

