かなり心臓をときめかせていると、電車がだんだんと速度を落とし始め、ホームに入った。

一臣君が外に視線を移したと同時に電車が止まる。

そして、


(…あ)


すっ、と離れた手。

少しだけ。

ほんの少しだけ残念だと思っちゃう自分に動揺してしまう。

すると、


「着いたな」


一臣君の声が聞こえて、また手をギュッと握られた。


「………!」


わ、わぁ。

何か、何か、嬉しい。


「なあ?香澄」

「な、何」


かなり動揺するあたしとは違い、全く動揺してない一臣君がにっこりと笑う。


「まだ時間ある?」

「う?うん」

「じゃあ、どっかよってこ?」

「………え」


一臣君のお誘いに驚いて一臣君を見上げると、耳元に一臣君の唇が近付く。


「放課後デート、しよ?」

「………っ」


耳元で囁くように聞こえた少し低い声に心臓がキュンッと一際大きな音を立てる。


(どうしよう、心臓が苦しい…)


思わず胸元に手を当てたあたしに『あ、制服デートとも言うな』とまた囁いた一臣君の隣であたしはまたまた意識を飛ばしそうになってしまった。