他校の君。【完】




腰に回されていた腕が離れ、また手を繋いだ一臣君に引っ張られるまま着いて行った場所は、あまり人気のない公園。

そのまま公園を突っ切って、お祭り会場からどんどん離れて行く一臣君に不思議に思う。

何でお祭り会場から離れちゃうんだろう?

もしかして、もう帰るとか?


「あの、一臣く「こっちの方が、ゆっくり花火が見れるから」

「そ、そっか」


よかった。帰る訳じゃないんだ?

ホッとしたと同時に一臣君が足を止めて、ある方向を見ろと視線で促す。

その視線の先を追って見てみると、さっきあたし達がいたお祭り会場を見下ろす事が出来た。


「ここ、武達と見つけた穴場だから、あんまり人が来ねーんだよ」

「そうなんだ?じゃあ綺麗な花火、誰にも邪魔されずに見れるんだね」

「そ。ついでに言うと武達は今年は別の場所で見るからここには来ない」


じゃあ二人っきりだね、と言おうとして、すぐに言うのを止める。


(か、一臣君と二人っきり…?)


その事に気付いて意識し始めてしまう。

ドキドキと高鳴る心臓。

あ、あれ?

息ってどうするんだっけ?

息の仕方が分からない。


「ー…今、香澄の側には俺しかいない」

「………っ」


ここは『そうだね』って普通に言うべき所なのかもしれないけど、意識し過ぎてるあたしはそんな事言えない。


「だから、言ってくんねー?俺しか聞いてないから」

「……へ?」


何を?


「何で悲しそうにすんの?」

「………!」


一臣君に聞かれて、あたしは動揺してしまった。