一臣君にジーッと見つめられて、あたしは笑ってごまかそうとする。
なんだか視線が痛いけどそれでも笑っていたら、
「じゃあ、部長また」
一臣君が千尋君と彼女さんに挨拶した後、繋いでいたあたしの手を引っ張り歩き出した。
「え、一臣君?」
驚くあたしの腰に腕を回して一臣君があたしを引き寄せる。
また、人にぶつかりそうになったのかと思ったけど、どうやらそうでもないみたい。
(…え…あれ?)
じゃあ、この腕は何?
近すぎないかなぁ?
一臣君の好きな人の事で凄く悲しいのに、この距離と腕にドキドキしすぎて、
悲しいのか、嬉しいのか、あたしの心はごちゃまぜになった。

