他校の君。【完】



千尋君の彼女さん?

千尋君の彼女さんをマジマジと見つめてしまう。

結構小柄な方だと言われてるあたしよりもさらに小柄。

長い睫毛に大きな瞳。

可愛い唇に可愛い声。

『ムカつく』って怒ってる姿も可愛い。


(そりゃあ、一臣君も好きになっちゃうよ)


同じ女のあたしから見ても千尋君の彼女さんは凄く可愛い。

一臣君はこの人が好きなんだ?

そう思うと、また悲しくなる。

シュンと俯いてしまうと、一臣君があたしの顔を覗き込んで来た。


「どうした?」

「ど、どうもしないよ」


あまりの近さに驚いて慌てて一臣君から離れると、一臣君がまた不機嫌そうな表情をする。


「香澄は分かりやすいんだから、そうやって隠すなよ。隠されると何か傷付く」

「…か、隠してなんか」

「隠してるだろ」

「隠して…ないよ」


ー…言えないよ。

一臣君が好きだから、一臣君の好きな人を知ってしまって悲しいだなんて。