さっき雪にされた時みたいにまた誰かに引っ張られる。
少しよろめいたあたしはそのままあたしを引っ張った人の腕の中に閉じ込められた。
ギュッと抱きしめるその行為にあたしは固まってしまう。
だって、雪の事で混乱してる上にさらに混乱してるのに、
「香澄に何しようとしてんだよ」
一臣君にこんな風に抱きしめられたら、頭がパンクしちゃうから。
「別に何でもいいだろ。って言うか、触んなって香澄はあんたのじゃない」
雪が一臣君を睨みつけると一臣君も睨み返す。
二人の間に流れる空気が明らかに悪いけれど、固まったままのあたしは何も言えない。
「お前の言う通りだけど、お前のもんでもねーよ」
一臣君があたしを抱きしめるその腕に力を込めるから心臓が壊れそうな音を立てた。
思考は止まっても、心が勝手に反応する。
しかも、
「確かにそうだけど、だからって俺達の邪魔する権利は無いと思うんだけど。あんた、香澄の彼氏でも無いし、香澄が好きな訳でも無いだろ。…ところでいい加減香澄を離してくんない?」
「断る。権利とかそんなん俺にあるとか無いとか関係ねーよ。香澄にちょっかいかけられんのが面白くねぇんだから」
(一臣君の声が耳のすぐ側から聞こえる…)
「……じゃあ、あんたと俺は仲良くは出来ないな」
「だな」
(意識飛んじゃいそう…)
一臣君と雪の間でバチバチと火花が散る中、あたしは一人全然違う事を考えていた。

