ー…
………
「…い」
声が遠くの方で聞こえる。
この声、どっかで聞いた事あるなぁ。
どこだろう?
とろとろとまどろみながら、ボーッとそんな事を考える。
「おい。起きろって」
…あれ?
起きろって聞こえる。
ん?
…起きろ?
もしかして、寝たフリするつもりが、いつの間にか本気で寝ちゃってた?
だんだんと意識が戻ってきはじめた、その時、
「…いい加減起きないとヤるぞ?」
(ヤ……へ?)
もの凄い発言が聞こえて、あたしは一気に覚醒した。
慌てて声がした方向を見ると、
「………っ」
凄い近距離であたしを見下ろす一臣君。
(………え?)
「あれ?」
な、何この状況。
何で一臣君がこんな近くにいるの?
一臣君が今いる場所は、座っているあたしの一歩前。
立ってあたしを見下ろす一臣君が後少し屈めば、驚いて見上げるあたしと普通にキス出来ちゃう。
「『あれ?』じゃねぇよ。とっくに電車着いてんのにいつまで寝てる気?」
「ご、ごめんなさい」
反射的に謝ったけれど、一臣君に話しかけられたいつかのように、頭が全く追い付いていない。
ー…あたし、何で謝ってるんだろう?