しかし、約束の時間をもう30分も過ぎている。

「ねぇ、迷ってない? 陸にメール、もう一回してよ」

ハルカに言ってみると、携帯を覗き込みながら、首をかしげる。

「さっきもメールしたんだけどさ。返事ないんだよね」
「陸が連れて来てくれるんでしょ?」
「俺、見てこようか?」
「つかぁ、電話しなよ、電話」

みんなで口々にハルカに電話をと言うと、ハルカがスティックを回しながら、全員を制する。

「まあ、もうちょい待ってって! 来るから!」

全員が、その根拠もなく自信満々なハルカに押されて口ごもる。

その時、キイ、と音を立てて、リハーサル室の重い扉が開いた。
みんな一斉にそちらを振り向く。