その夜、屋敷の主は食後に酒をたしなんだ。



血のように濃い朱色の葡萄(ぶどう)酒。




毎夜というわけではない。

月の大きく輝く夜に己を鎮めるように静かに口に含むのだ。





クレアも当然のように付き合わされていた。




「ほら、飲めよ」


自分の杯を突きつけてくるサイファから無言で小さく顔を反らした。



酒が飲めない訳ではない。
シアンと巡った各所で収穫祭があれば村人と杯を交わした。



しかし、今は毎日のように生血を飲まされているのに、


飲む必要のない血のような葡萄酒まで飲む気になれないのだ。



しかし、それをサイファは許さなかった。

少しでもクレアが逆らうのが気に入らないのだ。