その時、クレアの鼻先をツンと掠(かす)めたのは生臭い臭い。


むせかえりそうなソレをクレアは遠くない過去に嗅いだ覚えがある。



―――昨日、あの庭で……



「……それ…何?」


不審な瞳を召し使いに向ける。




召し使いの瞳がギョロリと動き口がゆっくり開く。




「生血でございます」





キャアアァアア


瞬間、クレアは悲鳴をあげ近くに出されていたグラスをはじいた。



昨日の庭での惨劇の時と同じように、真っ赤などろどろした液体が周りに飛び散る。




(何よ?この屋敷。何故こんなものを出すの?あの男の嫌がらせ?)



クレアは全てを拒否するように、召し使いに背を向け、頭を抱えベッドにうずくまった。